松本清張の「影の地帯」に登場する野尻湖は、神秘的でどこか怪しげな雰囲気が漂っていた。多分、清張の巧みな文の運びが不思議な雰囲気を醸し出したのだろう。古くは信濃尻湖(しなのじりこ)と呼ばれ、ナウマンゾウ化石が出土する湖で、長野県では諏訪湖に次いで2番目に大きい湖で知られている。清張の影響で野尻湖には一度は訪れたいと思っていたが、なかなか機会がない。野尻湖に行くには何かのついでにとは行かない。野尻湖に行くのだと強い気持ちが無ければ行けない。しかしとうとうそのチャンスがきた。姉親子に誘われたのだった。姉は旦那に先立たれ一人息子といつも連んでいて、飲食するのも買い物に行くのも、常に一緒に行動する。考え方によるとちょっと妙な親子である。とりあえず車2台で長野に向けて出発した。
ジャンプ台はやはり迫力があり、オリンピックが蘇る
最初に訪れたのは、長野オリンピックで脚光を浴びた白馬のジャンプ台だ。やはりジャンプ台は迫力がある。下から見上げても、踏切台から見下ろしてもこんな高い所から飛ぶなんて人間のする技ではない。ただただ驚愕した。ジャンプ台は以前に札幌の大倉山と宮の森はに行ったことがある。これは札幌に行った時にブラリと寄ったもので、長野のジャンプ台に比べたなら、札幌のジャンプ台は都会にあるジャンプ台って感じで、札幌の街を見下ろせる。長野のジャンプ台を後にして、次に訪れたのは野尻湖。待ち焦がれた野尻湖だが、描いていたイメージとは違い、簡素で地味な湖だった。第一印象は暗いイメージで、観光地に多く見られる湖とは異なり寂しさを感じる湖だ。黄昏だったので余計そんな感じがしたのかもしれしれないが、車を降りて散策する気にはならなない。野尻湖は来ないで想像していた方がましだった。
目の前はスキー場は、スキーを吐いたままで行ける
次に向かったのは宿泊先の黒姫山。この黒姫山(高原)は子供頃に黒姫山って相撲取りがいたので印象に残っていた。その黒姫山の宿泊先に着いた。目の前はスキー場でなかなかいい感じ。スキーヤーとっては絶好のゲレンデーだが、残念ながら著者も姉親子もスキーはしない。いずれにしても雪のないシーズンなのでスキーとは無縁。このホテルを予約をする際に温泉と聞いていたので、温泉でも堪能しようと思って浴室へ行った。しかしここの温泉は鉱泉で沸かし湯だった。浴室はこそそこそこ広さがあり、鉱泉と知らなかったら、それはそれでいい温泉なんだろう。露天風呂を真似た仕切りを設け、外の景色がみられる工夫もしてあった。食事は部屋も可もなく不可もなくって感じで、その夜を過ごした。
派手さはないが、どこか懐かしい雰囲気の小布施
翌朝は小布施に向かった。ここには何度か訪れていたが、派手さはなく時間がゆっくり流れている感じで、魅力のある街で「栗」と「葛飾北斎」が有名。観光客も街に風景に目立たないくらいの人数が散策していており、賑やかな観光地とは違いのんびり過ごせる。見所は北斎館をはじめ高山鴻山記念館、日本のあかり博物館などがありのんびり時間が流れるのを楽しめる。また曹洞宗岩松院の21畳もある本堂の天井に、北斎がが描いた翼を広げた鳳凰が描かれており、北斎の凄さに驚く。この絵は北斎が89歳の嘉永元年(1848年)の作品と伝えられている。小布施を後に帰路に立った。高速道路のインターに入る前に果物を売っている露店が数軒軒を並べていた。そこで桃を少し高価だったが買い求め、車に積んでご機嫌で家に着いた。ところがその桃が酷いもんだ。表面はとても綺麗だが、そこの方の桃が全て痛んでおり、もはや桃の色などではない。赤茶っけ黒ずんでいた。確認しないで口車に乗ってしまってのがいけないでのだ。こんなことがあると、せっかくの旅行も長野の印象も悪くなってしまうのでは。