国立劇場で「盛岡さんさ踊り」を観て魅了された。それ以来本場の盛岡で一度見てみたい願望が湧いた。しかし盛岡に行く機会がなく、国立劇場で観てから三年が経った頃、「さんさ踊り」の新聞広告を見た。しかし今回はツアーではなく自由に岩手県を廻ってみたっかったので、単独で行くことにした。盛岡に行く前に、厳美渓と蘇民祭で有名な黒石寺に行ってみたいと思った。普通なら新幹線の水沢江刺駅か一関駅で下車するのだが、今回は盛岡まで行った。何故ならば、水沢江刺駅や一関駅ではレンターカーを借りて、盛岡で返すシステムがなかったからだ。いたしかないので盛岡まで行って東北道を戻って一関ICで降りた。ここは厳美渓で川下り目的だ。よく見られる川下りは急流を船頭が巧みに竿などを操り、水飛沫がかかる勢いで川を降るのだが、ここ厳美渓は川の流れはゆっくりで、船はのんびり川を下るのが売りだ。また2kmにわたり渓谷美の両岸の景観は穏やかで、船頭の説明がコダマのように反復し、ノンビリと舟下りを楽しめる。
岩手の名所を廻ったが、どこでも人は疎らで、観光客も少なかった。
次は黒石寺に行った。こんな真夏に行っても何もないのを承知で行った。想像通り閑散としている。こんな所で死闘が繰り返すのか信じられなかったが、男どもが夢中で奪い合う声が聞こえてくるようだ。黒石寺には御朱印をもらうのも目的だが、門は閉ざされ、人の気配は全くしない。黒石寺の脇にある壁に沿ってに少し探してみたが、御朱印ももらえそうな所はない。誰か通らないか、暫く待ってみたが、一向に人が来る気配がな。仕方ないので次の目的地の遠野に向かった。ここは昔からカッパ伝説があり、全国に知られている。カッパなんかは実際いないだろうが、どうな状態がカッパがいると伝えられているのか、それを見てみたかった。遠野は思っていたより大きな土地だったが、カッパがいると云われる「カッパ淵」はすぐ見つかった。、その昔、武将が馬の足を洗っていたら、この淵からカッパが出てきて悪さをしたらしい。今はその淵らしきものはないが、幅2~3mの川原には、夫婦のカッパが鎮座する祠がある。この「カッパ淵」では子供達に混じって大人もキュウリを餌に竿を垂らしている。実際カッパなんかはいないのを承知の上、ロマンを求めているようだった。
好きなドブロクをもてめたが、その年の出来具合で味は変わる
遠野は我が国でも、早くから「ドブロク」造りが認められた所で、その「ドブロク」を求めて遠野の街を探した。どうやら山の上にある民宿で造って売っているらしい。ようやく民宿も見つけ辿り着いた。その民宿はシーズンオフなのか、客はいそうな雰囲気はなかった。民宿の中に入るとあまり愛想の良くない初老の男性が対応した。恐る恐る「ドブロク」を頼み、自宅に送ってもらうことにした。これから盛岡に戻るのには、かなり時間がかかりそうだ。「どこか近道はないですか」尋ねたら、道順を教えてくれた。これが失敗の元になるとは思わなかったが、取り敢えず教わった道を走った。この先の道路は、来るときに通った道だからと想い、その前にある道を入った。初めは良かったが、段々山道になった。車1台分が通れる細い道だ。もちろん車のボディは草木に擦れている。40分くらいも入って時点で「こんな道ではないだろう」思い直したが、車で切り返す所もなく、仕方ないのでバックで戻った。ようやく切り返せるスペースが見つかった。そこからしき返したが、かなりのロスだった。結局はきた道を戻る格好になった。
急げば廻れの体験したが、レンターは擦れた後がつき、修理だをとられた
つまらぬ寄り道になったが、盛岡には夕方の5時前にホテルにはついた。ホテルは盛岡市内なのに温泉だった。早速、温泉に浸かった。温泉はナトリウム・炭酸水素塩泉で肌に良さそうな温泉だった。「さんさ踊り」が始まるまでは少し時間があったので、ホテルで軽く食事をとった。ホテルの前でタクシに乗り「さんさ踊り」の会場までと行ったが、「今日は会場まで入っていけないので近くまでに」と云われ、近くでタクシーを降りた。「さんさ踊り」の観覧席を予約していたが、場所が分からない。しかし意外と観覧席は簡単に分かった。「よさこい」や「阿波踊り」と違って、席は見やすい場所だった。「サッコラー チョイワヤッセー♪」の掛け声が特徴で、例年5名がミスさんさ踊りに選ばれて、2ヶ月も厳しい訓練を受けるらしい。そのミスたちを先頭に「さんさ踊り」が始まった。踊り手以外は、全て胸の前に備えた太鼓を鳴らし、その数は1万人とも云われている。また歴代のミスたちの集団も過ぎ、やはりミスたちの踊りは、際立っている。
「さんさ踊り」に出た若い子たちは、明るくるくて気さくだった
9時を過ぎ「さんさ踊り」も終わったが、タクシーは簡単に捕まらない。ホテルがあると思われる方向の路地を歩いてた時、「さんさ踊り」に参加していた女の子が三人が笑いながら話をしていた。何気なく「その太鼓は重いの?」と尋ねたら、「良かったらどうぞ」と気軽に太鼓を持たせてくれた。太鼓は意外と重く、ズッシリと感じた。「意外と重いんだ」と思わ呟いた。「そうなんです」と若い子らしく明るく返答した。気軽に太鼓を持たせてくれたのも驚きだが、なんと屈託が無く明るい若い子たちは、盛岡の土地柄なのか親しみを感じさせた。東京と違って気さくで親しげに対応してくれた若い子たちは、怪しいオジさんと思われないのか。東京なら完璧に怪しいと思われたはずだ。それから少し歩いてたら腹も空いていたので、帰りは一杯やりながら、盛岡の夜を楽しんだ。いい祭りだった。